なにも絵画や彫刻だけがアートではありません。
フランス語には「Art de vivre」、つまり生活の芸術という言葉があるくらいです。人間が何か創造的な何かをするとき、そこには必ずアートがある・・・そんなニュアンスが、フランスの文化にはあるような気がします。
そういう意味では、人を喜ばせる娯楽の分野の装飾というのは、かなり立派なアートです。そこには夢があり、ロマンがあり、人をワクワクさせるエッセンスがあります。そんな、老若男女をとりこにするエンターテイメントを一堂に集めた博物館。それが「Musée des Arts Forains 縁日博物館」です。
Contents
19世紀に一世を風靡した華やかな遊戯がずらり
日本で「縁日」といえば、神社の大祭でずらりと並ぶテキ屋さんのイメージがあります。フランスにも「縁日」がありますが、フランス語の「forain」をたまたま日本語に訳すときに「縁日」としただけで、その内容はまったく異なります。
パリをふくめ街にやってくるのは屋台ではなく、乗り物やゲームがメインのいわば「移動遊園地」。現代では絶叫マシンなど、メカニックなアトラクションも多いのですが、この博物館にあるのは、19世紀頃に一世を風靡したとびっきり華やかなメリーゴーラウンドやフリッパーなどの遊戯。昔なつかしい・・・といっても日本ではお目にかかれないようなスケールの大きなものばかり。
photo by Takeshi
俳優のようなガイドが移動遊園地の歴史へご案内
この博物館、実はガイドツアーのみの案内になっています。引率してくれるのは、まるで舞浜にある某テーマパークのキャストのようなユーモアたっぷりの博物館専門ガイド。
集まってくるのは、子供と一緒の家族が多いけれど、外国からの観光客がいれば英語を加えて説明をしてくれます。
創立者Jean Paul Favandが35年をかけて集めたという膨大な遊戯のコレクションを一堂に集め、おとぎの国のような壮大な遊園地に仕立てた夢と幻想のミュゼ。それを順番に、歴史を追うように見ていきます。
photo by Takeshi
動く仕組みはもちろんのこと、人を驚かせる工夫を凝らしたアトラクションの数々。当時の人々をどれだけ興奮させ、イマジネーションの世界にひたらせたかが想像できるというもの。それは、かつての最先端技術と装飾美術の粋を集めた、まさに博物館・美術館級の代物ばかり。
しかも見るだけではなく、アンティークもののメリーゴーラウンドに実際に見たり、乗ったり、あるいは巨大なピンボールのようなゲームを楽しむこともできます。
photo by Takeshi
歴史あるワインの巨大倉庫を改造
パリの東側、ベルシー地区にあるこの博物館。もともとは、19世紀初めに創られたパリにワインを供給するための巨大な倉庫があった場所。かつてはパリ市からは外れていて、ボルドー産もブルゴーニュ産も、全国から集められたワインはセーヌ川から荷揚げしてここにいったん保管されました。パリに入る酒を管理し、酒税を徴税するのが目的でした。
パリに入る時には税金がかかるので、ここで消費すれば税金がかからないと、ベルシー地区には歓楽街・娯楽施設が生まれました。いまはその跡地は巨大な公園とショッピングセンター、そしてこの博物館のある貯蔵庫跡となっているのです。
photo by Takeshi
パリの輝かしい歴史を垣間見るようなスペクタキュラーな遊戯施設の数々。この外観からは想像もつかないような隠れた博物館をぜひ訪れてみては。
<Information>
Musée des Art Forains 縁日博物館
53 Avenue des Terroirs de France, 75012 Paris
公式ウェブサイト(ガイドツアーは下記ウェブサイトにて事前予約が必要)
http://arts-forains.com/