パリに20の区があることは、知っている方も多いことでしょう。そのうち外側をぐるりと囲む11区から20区あたりはだいたい住宅地。エリアによってバラツキはありますが、おおむね一般庶民が暮らしています。
このうち15区はパリの南にある20区の中でもいちばん大きな区ですが、ほんとうに普通の人々が静かに暮らすエリアというイメージがあります。会社に勤めたり、自営業を営んだり。仕事が終わるとメトロやバスでアパルトマンに帰り、家族や子供たちと団らん。時には近くのカフェやブラッスリーや静かな公園で時間を過ごし、という生活を送っています。
あえて東京23区で当てはめるなら、豊島区みたいな感じでしょうか。庶民的でにぎやかな商店街と住宅街がほどよく混じり合った場所。そんな普通のパリ15区民に愛されるブーランジュリー(パン屋)兼パティスリー(ケーキ屋)があります。
その名は「La Maison Pichard」(ラ・メゾン・ピシャール)
photo by Takeshi
毎年のように賞をとってきた店の、味自慢のクロワッサン。
食べることが大好きなフランス人が、とりわけうるさく味にこだわるのがパン。ヨーロッパを中心にいろんなパンを試してきましたが、パンの味はやっぱりフランスがいちばんだと思います。
特にバゲットとクロワッサンにはそれぞれこだわりがあるもの。パン屋にも質の違いが当然あって、美味しいところとそうでもないところでは人の並び方が違います。
そしてパンには、その年のいちばんを決めるコンクールがあるのです。
実はパンの国フランスでも、特にパリはもうすでに約80%が工場で作られたものが運ばれてくるか、生地を仕入れてパン屋で焼いているとか。残りの約20%が昔ながらの製法で、手で生地をこね、形をつくり、店の窯で焼くというスタイルをとっているのです。
そのクロワッサンの2017年のコンクールで、パリを含むイル・ド・フランス地方のNo.1を獲得したのが、ここ「La Maison Pichard」。
photo by Takeshi
その前の2016年のサロン・ド・ショコラで開催されたパン・オ・ショコラのコンクールでもNo.1を獲得する快挙。お店そのものの質が高い証拠です。
噂通り、満点の美味しさ
ここは、なにやら包み方もかわいいのです。クロワッサンを2つ買うと底を合わせて重ね、薄い包装紙でくるくるっと巻いて渡されます。
photo by Takeshi
お値段はなんと1つ1ユーロ(約125円)。
東京なら300円くらいしてしまいそうな、極上のクロワッサンです。香ばしさが包みの外にも広がって、それだけで美味しさが伝わってくるような感じ。口にすると、あたりの柔らかなサクッと感、そしてフランスが誇るバターのたまらない風味が、ほどよく口の中に広がります。しっかりバターなのに、脂っこさはまったく感じられない絶妙な味わい。
久々に、100点満点のクロワッサンに出会いました。
メトロ6号線の「Cambronne」駅から歩いて8分ほどでしょうか。ほかに観光地もなにもないところですが、わざわざクロワッサンやパン・オ・ショコラを買いに来ても良さそうなほど、なかなか貴重な味です。
<Information>
La Maison Pichard ラ・メゾン・ピシャール
88 Rue Cambronne, 75015 Paris
メトロ6号線「Cambronne カンブロンヌ」駅徒歩