モード、アートの国として知られているフランスではありますが、その根本的な豊かさの源泉は農業。フランスはヨーロッパでもいちばんの農業と酪農の国です。パリの北西からイギリス海峡のほうへと広がるノルマンディーはその酪農国のシンボルともいえる地方。この地方だけで酪農に従事する牛が220万頭以上いるといわれ、牛乳はもちろん、チーズ、バター、クリームなどありとあらゆる乳製品がせっせと作られているのです。
そして、もともと甘い物にも目がないフランス人が乳製品を手に入れて行き着いた先は「ミルクキャラメル」ということになります。ここノルマンディー地方の西側にあるブルターニュ地方はゲランドなど海ぎわの塩田からとれる良質な「塩」の産地でもあって、そうしたいろいろな環境の要因が、この地方に「塩バターキャラメル」なる名産品を生みました。
砂糖と生クリーム、バターなどを混ぜて作られ、フランスのお菓子にもよく使われるキャラメル。これをこよなく愛してしまったパティシエがパリにオープンしたお店、それが今回ご紹介する、その名も「Karamel キャラメル」です。
photo by Takeshi
場所は、先日ご紹介したレストラン「Pertinence ペルティナンス」からも近いパリ7区。サン=ドミニク通りは、パン屋やレストラン、カフェ、さまざまな店が並ぶ長い長い商店街です。アンヴァリッドというナポレオン・ボナパルトの棺がおいてある軍事博物館のある場所からほど近いこのサン=ドミニク通りの入口にあたるところに「Karamel」はあります。
photo by Takeshi
創業者のパティシエはNicolas Haelewyn ニコラ・エルウィン。ここのケーキにはキャラメルがかなりの頻度で使われていますが、その度合いはケーキごとに巧みに調整されています。エクレアの上にどーんとキャラメルが載っていれば、時にはほんの隠し味程度に使われていたり。そのバリエーションの幅も腕の見せどころでしょう。
photo by Takeshi
ここのスペシャリティのひとつは、実はタルト・シトロン、つまりレモン・タルトです。フランス、ヨーロッパでおいしいタルト・シトロンに出会うと、しっかりと酸っぱいレモンが効いていて、それが酸味好きにはたまらない訳ですが、ここはまさにそうタイプ。ケーキの上に載っているまるで石膏像の一部かイスラム教のモスケの屋根のような美しいは造形は、一見メレンゲのように見えますが、実はホイップで形成されています。
手で触るとクリームがくっついてしまうので、持ち運びには厳重な注意が必要です。
photo by Takeshi
ほかにも濃厚なキャラメル好きにはたまらないビスケットやヴィエノワズリーの数々。そしてもちろんキャラメルそのものもたくさんのバリエーションが置いてあります。
photo by Takeshi
フランスに来てすっかり甘党になった私にしても、キャラメルの味ってちょっと他の甘さとは違った「脳髄を刺激する甘さ」で、これはさすがに毎日は食べられません。でもきっとフランス人にとっては「本能が求める」味なんでしょうね。キャラメルの風味を洗練されたケーキで味わいたい、そんな人におすすめのお店です。
<Information>
Karamel Paris キャラメル・パリ
67 Rue Saint-Dominique, 75007 Paris
営業時間 10:00〜20:00(土日は9:00〜)
公式ウェブサイト