日記

巨大なルーブルだからこそ、美術館の中に穴場がある。というお話

 

ルーブル美術館は、フランス、いや世界でいちばん有名な美術館だから「穴場」じゃないでしょう。と思った読者の皆さん。

 

ルーブルの巨大さをあなどってはいけません!

 


photo by Takeshi

 

この美術館が誇る展示室全体の面積は、70,000㎡超。まず面積的には東京ドームの1.5倍。ルーブルの展示室は多くが約20mほどの幅のある大きなギャラリーや小さなギャラリーの集合体で、仮に20mの幅で展示室が続いてくとしても、約3.5kmの長さになります。これは東京の銀座4丁目交差点から秋葉原までの距離と同じ。実際には、細い展示室も多いので、これ以上になるはずです。

ちなみに日本でいちばん大きな面積をもつ国立新美術館でさえ、その面積は約14,000㎡。つまりルーブル美術館の5分の1。「一日では見切れない」のが正しいことはこれだけでもわかる、というものです。

 

ルーブルの展示室はすいている、という事実

 

「ルーブルは観光客がたくさんいるから混んでいる」・・・?

確かに、荷物検査のある2つのエントランスと、名画『モナリザ』の前はそうです。あと『サモトラケのニケ』『ミロのヴィーナス』『ナポレオンの戴冠式』といったガイドブックに載った名作の前にも人だかりがしています。それにしても「混んでる」というほどではありません。

実はルーブルの展示室はすいているのです。

有名な作品に集中するせいか、貴重な名画でありながら人があまりいない、なぜか素通り、あるいはあまりに広すぎるので誰も来られない、という作品も多々見られます。そういった「ルーブルの中の穴場」を、ゆっくりと心おきなく見学する、というのもルーブル美術館を楽しむコツといえると思います。

 

おすすめは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの部屋

そんな中、ぜひご覧いただきたいのが、16〜17世紀のフランス絵画のコーナーです。ガラスのピラミッドの下にあるナポレオンホールから、3つある展示室の入口のうちの真ん中にある「シュリー翼」と呼ばれる建物の中を入っていきます。ずっと奥へと進んでいったら、上階に登る階段をひたすらひたすら上がってきます。フランスの階数表示では「2階」ですが、天井の高いルーブル。まるで10階くらい登ってきたかと思うような負荷があります。

そこからさらに奥に行くと、フランス絵画の部屋。そして1600年代前半の画家、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの展示室があります。

有名なのは、写真の左端にある『いかさま師』。彼は1600年代初めの頃、まだフランス領ではなかったロレーヌ地方で画業をしていました。

 

この画家は、美術史の中では「カラヴァジェスキ」の一人として語られることがあります。

「カラヴァジェスキ」というのは、イタリアの画家カラヴァッジョに影響を受けたといわれる人々。彼は西洋絵画に革命的な変化をもたらし、とりわけリアルな人物表現や、光と影のコントラストが持ち味です。

ルネサンス以降、ちょっと停滞気味だったイタリア絵画の世界に、革命的なインパクトと変化をもたらし、それがヨーロッパ中に広まったのです。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールも、その光と影の表現に関しては人一倍です。カラヴァッジョと、生きていた時代は重なるものの、直接の知り合いではなかっただろうと言われています。当時、ド・ラ・トゥールのいたロレーヌ地方は、オランダ、フランドル地方とつながりがあって、おそらくカラヴァッジョの影響を受けたオランダ画家からその手法が伝わっていったのではないかともされています。

 

約300年間、忘れられていた画家

 

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは、ルイ13世の国王付画家にまでなったくらいの人でしたが、晩年にまたロレーヌ地方に戻って仕事をしたのと、彼のこの手法が流行らなくなってしまったこともあって、残念ながら一度美術の歴史からは姿を消します。

それがまた再発見されたのは、1934年。パリのオランジュリー美術館というモネの『睡蓮』があることでよく知られるミュージアムで「17世紀フランスにおける現実主義画家」という展覧会が開催されて、ド・ラ・トゥールの作品が日の目を見ることになります。これが、あらためて再評価されるきっかけとなりました。

ほかにも、ここから続くフランス絵画の部屋には、よく知られる名画もずらり。美術史の詳しい話はわからなくても、大きな表現の変化は見た目で感じることができるはずです。

ルーブルの穴場で見る名画。ぜひお試しください。


Musée du Louvre ルーブル美術館

Rue de Rivoli, 75001 Paris
火曜日定休
9:00〜18:00(水・金曜日は22:00まで)最終入場は30分前まで
メトロ1号線 Palais Royal – Musée du Louvre