日記

パリの学生になった気分で入れる、カルチェ・ラタンの鉱物博物館

 

東京の街で例えるなら御茶ノ水界隈、とよく言われるパリ5区のカルチェ・ラタン地区はセーヌ川の南側、サンジェルマン・デ・プレ地区から東へ少し行ったところにあります。

「カルチェ・ラタン」とは「ラテン地区」という意味で、大学の街として古くはラテン語を共通語にしていたところから、こう呼ばれるようになった、という逸話も多くの人が知るところでしょう。

そのカルチェ・ラタン地区のシンボルといえば、もちろん「ソルボンヌ」。パリ大学の総本部としてこれまた世界に知られていますが、このソルボンヌからサン=ミシェル大通りをあがってきてリュクサンブール庭園に辿りついたあたりに、今回ご紹介するスポット「パリ鉱物博物館」があります。

 

大学&研究所にお邪魔する珍しい博物館

 

この博物館は「パリ国立高等鉱業学校」という、工学分野のエリートを養成する学校、そして研究所の中にあります。創設は1783年といいますから、フランス革命が起きる少し前の時代、そしてこれから産業革命が起きようかという頃。ルイ16世の時代に、王立鉱業学校として誕生しました。

実際に今も稼働している大学ということで、この博物館を訪れるには、まずは学生や研究者などと一緒にこの建物に入ることになります。

入口を入っていくと、目立たないところに「Musée」(博物館)と書かれたプレートが貼ってあるので、それを目印にたどって行くと、階段を昇った2階博物館のエントランスが見えてきます。


photo by Takeshi

不思議な引力をもった鉱物のコレクション

 

最近は、日本でも鉱物が密かな人気を集めていて、鉱物を眺めながら静かにお酒を飲む「鉱物バー」なるものもあると聞きます。パリにそんなマニアックなバーがある、とは聞いたことがありませんが、地質や地球学に関しては好きな人も多く、フランス国内にはいくつかの鉱物博物館があったりします。

このパリ鉱物博物館には、世界中から標本約10万点ともいわれる鉱物コレクションがあり、そのうち約4,000点の鉱物、岩石、そして隕石までもが、リュクサンブール庭園を眺める奥行き約100mのギャラリーに展示されています。


photo by Takeshi

地球が長い時間をかけて生みだした、宝石のようにさまざまな色とカタチをもった鉱物たち。ラピスラズリの魅惑的な「青色」がフェルメールを魅了して『真珠の耳飾りの少女』などの名画を生みだしたように、神秘的な鉱物の色は人々をとりこにし、芸術家のインスピレーションの源になってきました。


photo by Takeshi

幅60cmもあろうかという巨大な水晶、有名な米国アリゾナのクレーターの隕石など、スケールの大きなパワーストーンがずらりと並ぶギャラリーは、博物館というよりは古いアカデミックな図書館の趣き。窓の外にはリュクサンブール庭園の緑が目の前に広がり、にぎわう外のパリとはまったく別世界の光景がそこにはあります。

パリには、実はもう一つ、先日このブログでも取り上げた自然史博物館の中の鉱物博物館があります。こちらはまさに鉱物の美しさを中心に、展示だけをしているところ。それに対して、こちらの学校所属の博物館のほうは、単にそれを見せるだけではなく、研究者がやってきて標本を資料として使ったりする「生きた資料室」の役割も持っています。

さすがは学校の中の博物館。しばし研究者気分を味わうことのできるちょっと特別な博物館のご案内でした。


<Information>

Musée de Minéralogie パリ鉱物博物館
(フランス国立高等鉱業学校内)

60 Boulevard St Michel 75006 PARIS

開館時間:火曜から金曜 13:30〜18:00/土曜 10:00〜12:30および14:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで

入場料:6€

公式ウェブサイト