江戸しぐさという粋なことばを聞いたことがありますか?
端的にいえば、相手を思いやり真心を込めた対応・所作・動作のことを指します。
一方で、時代考証から江戸時代にそぐわないものもあり、火事と喧嘩は江戸の華と言われてたときに、そんな互いに気遣いなんかしているわけがないだろう!という説もあったりします。
江戸しぐさ
私はこの粋な言葉が大好きです。
いいじゃないですか、それこそ時代考証がどうとか、不粋なことを言うのはダサ過ぎませんか
コロナ禍で世界中が危機的状況になり、このままでは確実に経済が破綻してしまいます。
それなのに、やれ自粛警察だ! 他府県民は来るな! とか少しでも咳き込んでいる人がいると睨みつけたり、つけられたり・・・という排他的な考えや行動をする人間が増えて来ました。
もちろん、警戒するには越したことはありません
しかし、徐々に今回のウィルスの特性もみえて来ているなか、恐れ過ぎて過剰に反応したり、経済活動をどんどん止めてしまうと、別の多大な脅威が訪れます。
そういう今だからこそ、江戸しぐさを見つめなおし、浸透させるべきでは?
と思いましたので、今回は江戸しぐさについて、触れてみたいと思います。
Contents
江戸しぐさの一例
それでは江戸しぐさとは、どういうものなのでしょうか?
実際の場面を想定して、ほんの一部ですが、現代の行動に置き換えて紹介したいと思います。
傘かしげ
狭い道で互いにすれ違うときに、そのまま歩くと傘の幅がある分、互いに傘がぶつかります。
身長差があると、体が濡れるだけでなく、時には顔の辺りをかすめ、ものすごく危険ですらあります。
傘かしげとは、すれ違う時に傘をヒョイッと持ち上げ、さらに相手とは逆方向へ傘を傾けるしぐさを指します。
斜めになる分幅も狭くなり、すれ違いやすくなり滴も反対側へ、ぼたぼたと落ちるので相手にかからない!という気遣いです。
肩引き
これも狭い場面を想定したしぐさです。
狭い廊下や路地で相手とすれ違うときに、そのまま歩けば肩と肩がぶつかり、場合によっては大きなトラブルにすら発展します。
そういう時に相手側に面する肩をちょっと引き、しかも軽い会釈や時には軽く「すいません」と一声かければ、互いに気持ちよくトラブルもなく、スムーズにすれ違うことができます。
たとえば、相手が妊婦さんとかお体の不自由な方の場合、完全に体を半身にして「どうぞ」と笑顔で一声かけるなどは、応用編といえるのではないでしょうか(この後に紹介する蟹歩きとは少し違います)
蟹歩き
肩引き応用編で紹介した状況よりもっと狭く、「互い」に完全な半身にならなければ、通れない場所で、すれ違う時にするしぐさです。
お互いが向き合い、蟹のように横歩きしながら、顔を合わせ軽く会釈をしてすれ違います。
ただ、これだけはそのまま当てはめては駄目で、男女の場合は女性側に背を向けるのがマナーだと思います。
こぶし浮かせ
電車内で座っている時、最初はすいていたかもしれませんが、だんだん混んできているのに空いていた時のまま全員がゆったりと、股を広げ座っているとイライラしませんか?
こぶし腰浮かせというのは、混んできた時というよりも、駅に停車しドアが開いて何人かの人が乗り込んできた瞬間に、座っている全員が『こぶし一個分』詰め(座り直し)少しでも他の人が座れるようにするしぐさのことを指します。
これは連携作業になるので、全員が動かねばなりません
相当の昔なら見られた行動(しぐさ)ですが、現在ではほとんど見かけないしぐさの一つになってしまいました。
ただ完全版でないものはまだ廃れておらず、無事生き残ってます。
全員でなくたった一人でも(もともと隣が空いていて)、横に人が座る瞬間一旦少し腰を浮かせ(ほんの少しでも)詰め直すしぐさも、こぶし浮かせの真髄を踏まえた行動です。
ほんの少し詰めるだけでも座りやすくなるし、それをされると「気遣ってくれたんだなぁ」と、悪い気持ちはしないはずです。
うかつあやまり
揺れる電車内では特にあり得ますが、うっかりと相手の足を踏んでしまったら当然「すいません」と謝りますよね うかつあやまりとは、そのあと踏まれた側の人間が「いえいえこちらこそ・・ついうっかりしてまして」と、逆に謝るしぐさのことを指します。
これはうっかりと踏んでしまった相手を気遣う心配りもありますが、自分自身も常にそういう場面を想定し対処できる様にしておかないとダメだったのに・・・自分のバカバカという戒めの意味も含まれています。(かなり人間ができてないとむずかしいですね)
逆!江戸しぐさの妖怪たち
江戸しぐさの真髄や意味というものが、おわかりいただけたでしょうか?
互いに気遣い 相手のことを思いやり 心配りをする
そうすることによって、お互いが気持ちよく生活できるし、ストレスも溜まりません
そこを踏まえた上で、世の中を見回すと「逆江戸しぐさ」
つまり自己中で相手に対し、全然気配りもしないというしぐさを目にすることが多々あります
そういうしぐさをみると、もはや人間とは見えず、妖怪やもののけの域に達しているのでは?と思ってしまいます。
そこで、もはや妖怪の域に達している面々を一部紹介したいと思います。
※妖怪では○○爺(じじい)とか婆(ばばあ)とよく言います。
言葉尻を捉えカリカリしない様お願いします・・また爺と分類していてもバリバリの若者のこともあります。
また分類上男性女性どっちが多いかで分けているだけでどちらの種類も存在することは多々あります。
妖怪 占領婆(せんりょうばばあ)
人様が座る席に、自分の持ちものをドンっと置いて陣地を広げ縄張りを強く主張する。
時には現代高速自動籠(かご)くるまの高級版であるトッキュウという、便利だが銭のかかる乗り物の自由席とかいう場所でも出没し、占領する。そうやって周りの人間に、多大なストレスを与えるという攻撃をする。
妖怪 通せん坊地蔵(とおせんぼじぞう)
江戸の駅のように、人様が多量に乗り降りする扉の前に踏ん張り、つっかえ棒に変化する。
おそらく一歩でも下界に降りると、溶けてなくなってしまうのであろう。
往来の通行の妨げになり、時どろぼうをする厄介な妖怪である。
妖怪 寸前割り込み爺(すんぜんわりこみじじい ※ばばあも多い)
自動籠くるまが到着するまでは、うしろで大人しく人間のフリをしている。
しかし、入り口の扉が開いた瞬間に正体をあらわし、加速装置を使い急に足早になって順番を抜かす。(直前横はいり)
そうやって前に割り込み、座席を確保する妖怪。
おそらく立っていると死んでしまうのであろう。
妖怪 雨雫垂らし婆(あめしずくたらしばばあ ※若い娘に変化していることも多い)
自動籠くるまの中が、人で溢れている雨降り時に出没
身動きできない状態の時、足や尻がじんわりと徐々に冷たく冷やされていく・・
フッとそのほうを見ると、濡れた傘がべったりと擦りつけられており、そしらぬ顔をして、自分には絶対に、濡れた傘をつけない妖怪
目的地に着いたら、水気を十分に拭き取られた傘を悠々と持ち、時にはまた雨の中を傘をさし次のターゲットの為に傘に水をたっぷりと含ませる。
水に濡れると大きなダメージを受けるのであろう
この妖怪に攻撃されると、ひんやりとした下半身でしばらく過ごさねばならず、一気に気分が憂鬱になる。
どうでしょうか?
皆さんも妖怪に遭遇しているはずです。
決してふざけているのではなく、それほど(妖怪と言っていいほど)心がすさんでいるし、周りの人間にも相当のストレスを与える存在になってますよ!と言いたいための喩えです。
今だからこそ!必要 江戸しぐさ!!
現代は、どんどん互いの気遣いや心配りというものが少なくなっていると感じます。
特に都会では、「何をそんなに一人でイライラしてるんだろう?」とか、「そんなに慌てなくともいいのに」、という人々をよく見かけます。
たとえば、どれだけの急用があるのかわかりませんが、相手を突き飛ばしたり、大きく舌打ちをしたり・・
それだけで終わればまだいいですが、「相手はものではありません」
心のある人間です。
そういうことをやって、実際に大喧嘩に発展し『結局大幅な時間ロス!』、という実例もたくさん目撃してます。
急がば回れ!です。
結果的に、そういうトラブルになると、急ぐための時間短縮どころか、警察沙汰にでもなろうものなら予定そのものがキャンセルになり、相手のある予定だと、その相手や関係者にも迷惑をかけることになります。
今の世の中、このコロナ禍が輪をかけてしまい、さらにギスギスした世の中になっています。
こういう時だからこそ、今一度江戸しぐさの本質・真髄である相手を思いやる 互いに譲り合う 心を配る・通わせる というところに目を向けませんか?
そして全員で協力しあい、住みやすい世の中にしていきましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。