日記

パリの街を作った石灰岩の採掘場が今はワイン博物館に

フランスといえばワインの国。しかしフランスワインといえばボルドーやブルゴーニュ、ロワールなどが有名で、パリでワインを作っていたというとちょっと不思議が感じがしますよね。

今回はその名残でもある、知る人ぞ知るパリのワイン博物館をご案内しましょう。

 

地下にある石で、地上の街を造ってきたパリ

エッフェル塔に近いパリ16区のパッシー地区。このあたりはセーヌ川のほとりからぐぐっとせり上がった丘になっています。あまりに急に丘になるので、地下を走ってきたメトロ6号線が表に出てきてしまうほど。


photo by Takeshi

 

かつてはこの起伏の斜面に葡萄畑があって、イタリア人が創設した修道院でワインが作られていました。さらに時代を遡ると、ここは石灰岩の石切場でもあったのです。

 

実はパリの街が造られていく過程で必要になった石は、おもにパリ市内の地下から掘り出されてきました。このあたりは強固な石灰岩の岩盤の上に立っていて、13世紀から18世紀にかけて、街の建設に必要な石材を切り出してきたのです。このためパリの地下はけっこう穴ぼこだらけといわれています。

この穴ぼこのひとつが、ワイン造りをしていた修道院の地下カーブ(ワイン貯蔵庫)として使われていました。そこがいま、ワイン博物館になっているのです。

 

高級住宅街の中のワイン博物館

 

パリの16区パッシー地区というのは、丘の上ということもあって、もともとは緑が多く、別荘地のように優雅な家が造られ、その後は高級住宅地が形成されてきました。今でも裕福な住人が多い、パリではちょっとお高くとまったエリアとして知られています。

15世紀にまで遡る修道院時代のカーブ跡地に造られた、ワイン博物館

それは、パッと見たところ博物館があるとは思えないような住宅街の中。セーヌ川からほど近い、崖下のささやかな建物がワイン博物館の入口です。しかしその中に一歩足を踏み入れれば、長さ約800mともされる洞窟のような場所に展示室が広がっています。


photo by Takeshi

いまここはワインの製造過程すべてがわかる展示室。発酵や熟成の過程はワインの本場のシャトーやドメーヌに行って見ることもできますが、ここは葡萄畑を作る鍬から、剪定、収穫の道具、ワインを貯蔵するために使った樽を削るかんななど、さまざまな道具を展示。さらには時代ごとの瓶やデキャンタまで、ワインにまつわるアイテムが2000以上も並んでいます。


photo by Takeshi

パリで地下に入れる施設というと「カタコンブ」と呼ばれる地下納骨堂かここか、あとは下水道博物館くらいでしょうか。カタコンブも実は、ここと同じように地下の石灰岩採掘場を利用したもので、パリの成り立ちを知る貴重なスポットですが、さすがに600万もあるといわれるずらりと並んだガイコツを見るのはちょっと・・・という人が多いのも確か。ここワイン博物館なら、そういう方にも安心して地下を見ていただくことができます。

 

最後は、博物館からワインがふるまわれます。これは、この博物館を主宰する「フランス王位執事協会 Conseil des Échansons de France」が所有するドメーヌで作られた独自のワイン。歴史を知りながら飲むワインはちょっと味が深まります。

 

現在では思いつかないようなパリの隠れた歴史に出会う場所。ワインと歴史の好きな方にちょっとした穴場のご案内です。

 


Musée du Vin ワイン博物館
Rue des Eaux – 5 Square Charles Dickens 75016
10:00〜18:00(月曜定休)

公式ウェブサイト
http://www.museeduvinparis.com/