日記

自然の美しさを発見するためのミュージアム、パリ自然史博物館

 

今回は、パリの中でたっぷり自然に浸る、ちょっと変わったミュージアムをご紹介しましょう。

英語の「museum ミュージアム」にあたるフランス語の単語は「musée ミュゼ」。こんな風に欧文にされると、どちらかといえば「美術館」のことをイメージしてしまいますが、これらは日本語の「美術館」「博物館」の両方を意味します。

それもそのはず、もともとの語源は英語もフランス語も、ギリシャ語の単語「mouseion ムセイオン」から来ています。古くは芸術や音楽、詩作、学術などをつかさどる9つの女神を祀る神殿のことをこう呼んだらしいのですが、それが時代を経て、芸術や学問の殿堂をあらわすようになったのだとか。音楽を意味する「music」も語源は同じです。

 


自然史博物館 photo by Takeshi

さて、パリのカルチェ=ラタンの東側エリア、国鉄オステルリッツ駅のすぐ目の前には、大きな植物園動物学の殿堂があって、あわせて「自然史博物館」(Muséum)をなしています。

 

あらゆる植物、季節ごとの花があふれる植物園

 

ここはパリの中心にありながら、23.5haもの面積に広がる緑のオアシス。単なる緑ではなくて植物園ですから、研究のためもふくめてあらゆる植物に覆われています。

はじめは1635年にルイ13世によって「王立薬用植物園」として開園したそうです。それが18世紀になって、植物学者で生物学者、そして思想家でもあったジョルジュ・ルイ・ルクレール氏によって、「自然史」を研究する施設へと変わります。


photo by Takeshi

ヨーロッパでは、大航海時代などを経てようやくその頃には「世界」「地球」というものの全貌が見えてきました。いろんな地域でいろんな民族にあわせ、さまざまな植物や動物がいることがわかり、こういった自然を学問として研究していこうという気運が高まっていたのです。

今では一般に開放されて、市民の憩いの場になっています。季節ごとにまさにありとあらゆる花が咲き、特に夏にはバラが美しく咲き誇ります。


photo by Takeshi

 

大群をなす物たちの雄姿が圧巻の博物館


photo by Takeshi

植物園の奥には「進化の大ギャラリー」と呼ばれる、動物の博物館。地球上のさまざまな動物の剥製昆虫などの標本がところ狭しとおかれています。


photo by Takeshi

中でも四方を展示室に囲まれた中央の吹き抜けに展示された、サバンナの動物たちが圧巻です。ゾウやキリン、鹿やハイエナなどがまるで群れをなすように置かれています。誰がどういうコンセプトで考えたのか、まるで生きているかのような表情で剥製がポーズをとっていて、あまりのリアルさに子供たちの中には逃げ出したり、怖がる子もいます。

 


photo by Takeshi

この空間の美しさにも注目したいところ。さすがはフランス、こういった展示の美学に関しては、日本ではなかなかかなわないものを持っています。


photo by Takeshi

 

恐竜や動物の骨ばかりを集めているのに、なぜか美しい

 

もうひとつ「古生物学と比較解剖学のギャラリー」と呼ばれる、骨の標本ばかりを集めた建物も、これまた圧巻です。


photo by Takeshi

ここは鯨を中心にした海中動物たちの展示室ですが、どうもこの博物館の方々は動物たちを群れで表現したがる傾向があるようです。昔ながらの伝統的な建物の中に陳列されていると、骨たちも美しい。博物学の先生方の気持ちが少しわかります。


photo by Takeshi
ほ乳類たちの展示室、ここも群れです。なぜかスターウォーズのワンシーンを思い出させます。
まさに自然とその歴史を満喫する博物館。自分たちがどこから来たのか、自分たちがどういう星に住んでいるのか、そんなことをつい思わずにはいられないパリの穴場です。


<Information>

Muséum national d’histoire naturelle 自然史博物館
(Jardin des plantes 植物園)

Jardin des Plantes 36, rue Geoffroy Saint Hilaire 75005 Paris
公式ウェブサイト
http://www.mnhn.fr/