先日訪れたパリロマン派美術館。
そこからさらに北へ、サクレ・クール寺院のほうへと上がっていくと、ピガールという駅に出ます。
そこは、ここから広がるモンマルトル地区が、19世紀頃にパリでいちばん「Cool」だった時代の繁華街。
モンマルトルといえば、ロートレックやルノワール、ユトリロ、ピカソといった
美術界のスターたちが住み、絵を描いていた街。
そして夜になれば、キャバレーや酒場などで、こうしたアーティストやモデルや小説家たちが、飲み、語りあい、一大文化を築き上げた街。
今は、サクレ・クール寺院の近くで観光客たちを集めながら、昔ながらのアパルトマンやブティックやカフェがならび、そこに雑貨屋やアートギャラリーなど新しいショップが混じって独特の雰囲気を生みだしているエリアです。
そこに、蓄音機博物館はあります。
映画や写真で見たレトロな蓄音機がずらり!!
photo by Takeshi
スマートフォンやMP4など手のひらサイズの音楽プレーヤーが当たり前になって、いまや「レコード」さえ、過去のもの。
「蓄音機」と聞いても、もう最近の人はさっぱりかもしれませんね。
それはいわば「音を出す機械」の原型。
円筒形や円盤形の金属に刻まれた溝を、針がなぞっていき、その振動を増幅して音を出します。
「蓄音機」が何かを知っている人でも「生」で音を聞いたことのある人は少ないはず。
ここは小さいながらも、その一大コレクションが見られて、しかも音を聞かせてくれる博物館なのです。
あの発明王、エジソンが発明したのが円筒式のフォノグラフ。
ベルリナーという人が作った、円盤状のグラモフォン。
今で言えば、ソニーとアップルのシェア争いのようなことが、20世紀のはじめに繰り広げられていたわけです。
photo by Takeshi
ラッパや大きな百合のような「ホーン」はその存在だけでも美しく、そこから出てくる音は心を震わせます。
他にもチョコレートに刻まれた溝で音を出したり、人形が喋ったりするする変わり種の蓄音機。そして、それが進化して生まれたレコードやその発展形としてのデュークボックス。そしてカセットレコーダーもここに。
photo by Takeshi
「録音再生」技術の歴史がここに詰まっているといえそうです。
ウディ・アレンの映画に出た蓄音機も。
この博物館の近くには、その起源になったギャラリーショップがあります。
ここにも蓄音機やその部品、ディスクがぎっしり。これらのお宝は、ウディ・アレン製作の映画『ミッドナイト・イン・パリ』で撮影に貸し出されたといいますから、ここがパリで随一のコレクションだということがわかります。
博物館を経営しているのは、Jalal Aro ジャラル・アロというもともと蓄音機のコレクション、販売をしていた、いわばマニア中のマニア。
2014年に一念発起して、ここモンマルトルのふもとに博物館をオープンしたのです。
パリの懐かしい記憶がつまった街のレトロなサウンド。
ここで聞く蓄音機の音は、ちょっと特別です。
<Information>
Phono Museum Paris パリ蓄音機博物館
53 Boulevard de Rochechouart, 75009 Paris
(メトロ2号線・12号線 Pigalle ピガール駅から徒歩)
営業時間:木〜日 14:00〜18:00
ウェブサイト
http://phonomuseum.fr/